ネットワーク設計で最もよく使われる技術のひとつが「VLAN」です。「名前は聞いたことあるけど、何のために使うのかよくわからない」という人も多いのではないでしょうか。
このシリーズでは、Cisco Catalyst 9606RのIOS XE 17.6.xを使って、初心者でも手を動かしながら学べる設定解説をしています。第3回の今回は、VLANの作成から、ポートへの割り当てまでを公式ドキュメントに基づいて正確に解説します。
動作環境
- 機器:Cisco Catalyst 9606R
- OS:Cisco IOS XE 17.6.x(Bengaluru)
- 前提:初期設定①(ホスト名・バナー・タイムゾーン)、②(SSH設定)が完了していること
- 参照元:Cisco公式VLANコンフィギュレーションガイド(IOS XE Bengaluru 17.6.x)
VLANとは何か、なぜ必要なのか
VLANとは「Virtual LAN(仮想LAN)」の略で、物理的なケーブル接続に関係なく、ネットワークを論理的に分割する技術です。
公式ドキュメントでは次のように定義されています。「VLANは、ユーザの物理的な位置に関係なく、機能、プロジェクトチーム、またはアプリケーションなどで論理的に分割されたスイッチドネットワーク」。
具体的にイメージしてみましょう。たとえば、同じフロアに「営業部」と「開発部」のPCがあるとします。VLANを使わない場合、どちらも同じネットワークに繋がっているため、互いの通信が見えてしまいます。VLANで分割すれば、同じスイッチに繋いでいても、論理的に別々のネットワークとして扱えます。
VLANを使う主なメリットはこの3つです。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| セキュリティ向上 | 部署やシステムごとにネットワークを分離できる |
| ブロードキャスト制御 | 不必要なブロードキャストが他のVLANに流れない |
| 柔軟な設計 | 物理的な配線を変えずにネットワーク構成を変更できる |
VLANの番号範囲
公式ドキュメントによると、VLANは1〜4094の番号で識別します。主な範囲は以下のとおりです。
| VLAN ID | 区分 | 用途 |
|---|---|---|
| 1 | デフォルトVLAN | システム初期化時に作成。削除不可 |
| 2〜1001 | 標準範囲VLAN | 一般的なユーザー設定に使用 |
| 1002〜1005 | 予約済み | トークンリング・FDDI専用。変更・削除不可 |
| 1006〜4094 | 拡張範囲VLAN | 大規模環境向け。VTPv3が必要 |
今回は最もよく使われる標準範囲VLAN(2〜1001)の設定を解説します。
VLAN設定の前提条件
公式ドキュメントには以下の前提条件が記載されています。
- VLANを作成する前に、VTPモードをサーバーまたはトランスペアレントモードにする必要があります
- デバイスがVTPサーバーの場合は、VTPドメインを定義する必要があります
- VLAN 1およびVLAN 1002〜1005は自動作成されており、削除できません
また、VLAN 4094はStackWise仮想機能で予約されているため、ユーザーが使用してはいけません。
VLANの設定手順
ステップ1:VTPモードの確認
まず現在のVTPモードを確認します。
C9606R-Core01# show vtp status
出力例:
VTP Version capable : 1 to 3
VTP version running : 1
VTP Domain Name :
VTP Pruning Mode : Disabled
VTP Traps Generation : Disabled
Device ID :
Configuration last modified by 0.0.0.0 at 0-0-00 00:00:00
Local updater ID is 0.0.0.0 (no valid interface found)
Feature VLAN:
--------------
VTP Operating Mode : Server
Maximum VLANs supported locally : 1005
Number of existing VLANs : 5
Configuration Revision : 0
MD5 digest : ...
VTP Operating Mode : Server と表示されていれば、VLAN作成が可能な状態です。
小規模環境や学習環境では、VTPの影響を受けないようトランスペアレントモードに設定することもあります。
C9606R-Core01# configure terminal
C9606R-Core01(config)# vtp mode transparent
Setting device to VTP Transparent mode for VLANS.
C9606R-Core01(config)# end
ステップ2:VLANの作成
標準範囲VLANを作成します。今回は以下の3つのVLANを例として設定します。
| VLAN ID | VLAN名 | 用途 |
|---|---|---|
| 10 | SALES | 営業部 |
| 20 | DEVELOP | 開発部 |
| 99 | MGMT | 管理用 |
C9606R-Core01# configure terminal
! VLAN 10の作成
C9606R-Core01(config)# vlan 10
C9606R-Core01(config-vlan)# name SALES
C9606R-Core01(config-vlan)# exit
! VLAN 20の作成
C9606R-Core01(config)# vlan 20
C9606R-Core01(config-vlan)# name DEVELOP
C9606R-Core01(config-vlan)# exit
! VLAN 99の作成(管理用)
C9606R-Core01(config)# vlan 99
C9606R-Core01(config-vlan)# name MGMT
C9606R-Core01(config-vlan)# exit
C9606R-Core01(config)# end
コマンド解説:
| コマンド | 説明 |
|---|---|
vlan [ID] | 指定したIDのVLANを作成し、VLANコンフィギュレーションモードに入る |
name [名前] | VLANに名前をつける(任意。省略するとVLAN0010などのデフォルト名になる) |
exit | VLANコンフィギュレーションモードを抜ける |
ステップ3:VLAN作成の確認
作成したVLANを確認します。
C9606R-Core01# show vlan brief
出力例:
VLAN Name Status Ports
---- -------------------------------- --------- -------------------------------
1 default active
10 SALES active
20 DEVELOP active
99 MGMT active
1002 fddi-default act/unsup
1003 token-ring-default act/unsup
1004 fddinet-default act/unsup
1005 trnet-default act/unsup
VLAN 10(SALES)、VLAN 20(DEVELOP)、VLAN 99(MGMT)が作成され、active状態になっていることを確認します。
ステップ4:ポートをVLANに割り当てる(アクセスポートの設定)
作成したVLANに、実際のポートを割り当てます。エンドデバイス(PC・サーバーなど)が繋がるポートはアクセスポートとして設定します。
今回は以下の割り当てを例にします。
| インターフェイス | VLAN | 用途 |
|---|---|---|
| GigabitEthernet1/0/1 | VLAN 10(SALES) | 営業部PC |
| GigabitEthernet1/0/2 | VLAN 20(DEVELOP) | 開発部PC |
| GigabitEthernet1/0/24 | VLAN 99(MGMT) | 管理端末 |
C9606R-Core01# configure terminal
! GigabitEthernet1/0/1 をVLAN 10(SALES)に割り当て
C9606R-Core01(config)# interface GigabitEthernet1/0/1
C9606R-Core01(config-if)# switchport mode access
C9606R-Core01(config-if)# switchport access vlan 10
C9606R-Core01(config-if)# exit
! GigabitEthernet1/0/2 をVLAN 20(DEVELOP)に割り当て
C9606R-Core01(config)# interface GigabitEthernet1/0/2
C9606R-Core01(config-if)# switchport mode access
C9606R-Core01(config-if)# switchport access vlan 20
C9606R-Core01(config-if)# exit
! GigabitEthernet1/0/24 をVLAN 99(MGMT)に割り当て
C9606R-Core01(config)# interface GigabitEthernet1/0/24
C9606R-Core01(config-if)# switchport mode access
C9606R-Core01(config-if)# switchport access vlan 99
C9606R-Core01(config-if)# exit
C9606R-Core01(config)# end
コマンド解説:
| コマンド | 説明 |
|---|---|
interface [インターフェイス名] | 設定するインターフェイスを指定する |
switchport mode access | ポートをアクセスモード(1つのVLANのみ)に設定する |
switchport access vlan [ID] | アクセスポートに割り当てるVLAN IDを指定する |
アクセスポートとトランクポートの違い:
| 種類 | 特徴 | 使用場面 |
|---|---|---|
| アクセスポート | 1つのVLANのみ属する | PC・サーバー・プリンターなど |
| トランクポート | 複数のVLANを通す(タグ付き) | スイッチ間・ルーター間の接続 |
エンドデバイスが繋がるポートは基本的にアクセスポートです。トランクポートの設定は次回の記事で解説します。
ステップ5:ポート割り当ての確認
C9606R-Core01# show vlan brief
出力例:
VLAN Name Status Ports
---- -------------------------------- --------- -------------------------------
1 default active Gi1/0/3, Gi1/0/4 ...
10 SALES active Gi1/0/1
20 DEVELOP active Gi1/0/2
99 MGMT active Gi1/0/24
各VLANのPortsカラムに、割り当てたインターフェイスが表示されていれば設定完了です。
特定のインターフェイスの状態を詳しく確認する場合は:
C9606R-Core01# show interfaces GigabitEthernet1/0/1 switchport
出力例:
Name: Gi1/0/1
Switchport: Enabled
Administrative Mode: static access
Operational Mode: static access
Administrative Trunking Encapsulation: dot1q
Operational Trunking Encapsulation: native
Negotiation of Trunking: Off
Access Mode VLAN: 10 (SALES)
Access Mode VLAN: 10 (SALES) と表示されていれば、正しくVLAN 10に割り当てられています。
ステップ6:VLANの削除(必要な場合)
誤って作成したVLANを削除する場合は以下のコマンドを使います。
C9606R-Core01# configure terminal
C9606R-Core01(config)# no vlan 20
C9606R-Core01(config)# end
注意: VLANを削除すると、そのVLANに割り当てられていたポートはVLAN未割り当て状態になります。削除前に、ポートの割り当てを変更しておくことを推奨します。また、VLAN 1およびVLAN 1002〜1005は削除できません。
ステップ7:設定の保存
C9606R-Core01# write memory
Building configuration...
[OK]
補足:VLANデータベースの保存について
公式ドキュメントによると、VLAN ID 1〜1005の設定はvlan.datファイル(フラッシュメモリ)に自動的に保存されます。write memoryコマンドはrunning-configをstartup-configに保存しますが、VLANデータベースは別ファイル(例:vlan.dat)として管理されています。VTPモードがトランスペアレントの場合は、VLAN設定も実行コンフィギュレーションに保存されます。
設定コマンドのまとめ
! VTPモードをトランスペアレントに設定(任意)
vtp mode transparent
! VLANの作成
vlan 10
name SALES
vlan 20
name DEVELOP
vlan 99
name MGMT
! ポートのアクセスVLAN割り当て
interface GigabitEthernet1/0/1
switchport mode access
switchport access vlan 10
interface GigabitEthernet1/0/2
switchport mode access
switchport access vlan 20
interface GigabitEthernet1/0/24
switchport mode access
switchport access vlan 99
! 設定の保存
end
write memory
よくあるトラブルと対処法
VLANを作成したのにshow vlan briefに表示されない
VTPモードがクライアントの場合、VLANはサーバーから受信しないと作成できません。show vtp statusでモードを確認し、サーバーまたはトランスペアレントモードに変更してから再試行してください。
ポートをVLANに割り当てたのに通信できない
以下を確認してください。
- 相手側の機器が同じVLANに割り当てられているか
- IPアドレスが同じサブネット内に設定されているか
- ポートが
no shutdown状態(シャットダウンされていないか)になっているか
C9606R-Core01# show interfaces GigabitEthernet1/0/1 status
connectedと表示されていれば、物理的にリンクアップしています。
まとめ
今回のポイントをまとめます。
- VLANは物理的な配線に関係なく、ネットワークを論理的に分割する技術
- 標準範囲VLANはID 2〜1001を使用する(1、1002〜1005は予約済み)
vlan [ID]でVLANを作成し、nameで名前をつける- エンドデバイスが繋がるポートは
switchport mode accessでアクセスポートに設定する switchport access vlan [ID]でポートをVLANに割り当てるshow vlan briefで作成したVLANとポート割り当てを確認する
次回はトランクポート(802.1Q)の設定を解説します。スイッチ間で複数のVLANを通すトランクの設定は、VLANを実際に活用するうえで欠かせない知識です。

過去記事もコチラに掲載しておきます。




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