初期設定①でタイムゾーン(JST)の設定を行いましたが、あのとき「外部ソースがある場合は手動設定は不要」と触れていました。今回はその答えとなるNTP(Network Time Protocol)の設定を解説します。
「初期設定①でタイムゾーン(JST)の設定」と聞いてピンとこなかった方は、最初に以下をご確認いただければと思います。

「時刻なんて大して重要じゃないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、ネットワーク機器の時刻がずれていると、ログのタイムスタンプがずれて障害の原因特定が困難になり、証明書の有効期限チェックが失敗してSSL通信が切れ、セキュリティ監査のログが信頼できなくなります。時刻の同期は地味だけど絶対に外せない設定です。
動作環境
- 機器:Cisco Catalyst 9606R
- OS:Cisco IOS XE 17.6.x(Bengaluru)
- 前提:初期設定①(タイムゾーン設定)が完了していること
- 参照元:Cisco公式システム管理コンフィギュレーションガイド(IOS XE Bengaluru 17.6.x)
NTPとは
NTP(Network Time Protocol)は、ネットワーク上のデバイス間で時刻を同期させるためのプロトコルです。
公式ドキュメントによると「NTPはきわめて効率的で、1分間に1パケットを使用するだけで、2台のデバイスを1ミリ秒以内に同期化できます」とあります。
NTPはUDP(ポート123番)上で動作し、RFC 1305で規定されています。
ストラタムとは
NTPには「ストラタム(Stratum)」という概念があります。これは、信頼できる時刻源から何ホップ離れているかを表す数値です。
| ストラタム | 説明 |
|---|---|
| ストラタム 0 | 原子時計・GPS時計など(ハードウェア) |
| ストラタム 1 | ストラタム0に直接接続されたタイムサーバー |
| ストラタム 2 | ストラタム1サーバーからNTPで時刻を取得するサーバー |
| ストラタム 3以降 | ストラタム2サーバーからNTPで時刻を取得するデバイス |
公式ドキュメントに明記されているとおり、CiscoのNTP実装はストラタム1をサポートしません。そのため、インターネット上のパブリックNTPサーバー(ストラタム1または2)から時刻を取得する構成が一般的です。
NTPアソシエーションモード
NTPには主に2つのモードがあります。
| モード | コマンド | 説明 |
|---|---|---|
| クライアントモード | ntp server | NTPサーバーからのみ時刻を受け取る(最もよく使われる) |
| 対称アクティブモード | ntp peer | 相互に時刻を交換するピア関係(冗長サーバー間で使用) |
一般的なネットワーク機器の設定ではntp server(クライアントモード)を使います。
日本で使えるパブリックNTPサーバー
NTPサーバーのIPアドレスまたはホスト名を指定する必要があります。日本で利用できる代表的なパブリックNTPサーバーは以下のとおりです。
| 提供元 | NTPサーバー |
|---|---|
| 情報通信研究機構(NICT) | ntp.nict.jp |
| インターネットマルチフィード | ntp.jst.mfeed.ad.jp |
| NTPプール(日本) | 0.jp.pool.ntp.org |
| NTPプール(日本) | 1.jp.pool.ntp.org |
冗長性のため、複数のNTPサーバーを設定することを推奨します。
NTPの設定手順
ステップ1:NTPサーバーの設定
複数のNTPサーバーを設定します。preferキーワードを付けると優先サーバーとして扱われます。
C9606R-Core01# configure terminal
! プライマリNTPサーバー(優先)
C9606R-Core01(config)# ntp server ntp.nict.jp prefer
! セカンダリNTPサーバー
C9606R-Core01(config)# ntp server ntp.jst.mfeed.ad.jp
! サードNTPサーバー
C9606R-Core01(config)# ntp server 0.jp.pool.ntp.org
C9606R-Core01(config)# end
コマンド解説:
| コマンド | 説明 |
|---|---|
ntp server [IPまたはホスト名] | NTPサーバーを指定してクライアントモードで同期する |
prefer | 複数サーバーがある場合に優先して使用するサーバーを指定する |
重要: ntp serverコマンドを入力した時点で、NTPがグローバルに有効化されます。
ステップ2:NTPの送信元インターフェイスを指定(推奨)
NTPパケットの送信元IPアドレスを管理用インターフェイス(SVI 99)に固定します。これにより、どのインターフェイスからNTPパケットが送信されるかが明確になり、管理がしやすくなります。
C9606R-Core01# configure terminal
C9606R-Core01(config)# ntp source vlan 99
C9606R-Core01(config)# end
ステップ3:タイムゾーンの確認
初期設定①でタイムゾーンが設定されているはずですが、念のため確認します。
C9606R-Core01# show clock
出力例(NTP同期前):
*10:05:30.123 UTC Mon Jun 1 2026
*(アスタリスク)が先頭についている場合、まだNTPで同期されていない状態です。タイムゾーンが設定されていなければ以下を設定します。
C9606R-Core01# configure terminal
C9606R-Core01(config)# clock timezone JST 9
C9606R-Core01(config)# end
ステップ4:NTP同期状態の確認
NTPの設定後、同期が完了するまで数分かかることがあります。以下のコマンドで同期状態を確認します。
C9606R-Core01# show ntp status
出力例(同期中):
Clock is synchronized, stratum 3, reference is ntp.nict.jp
nominal freq is 250.0000 Hz, actual freq is 250.0001 Hz, precision is 2**10
ntp uptime is 1234 (1/100 of seconds), resolution is 4000
reference time is E9B1234A.12345678 (10:05:30.071 JST Mon Jun 1 2026)
clock offset is 0.1234 msec, root delay is 12.34 msec
root dispersion is 5.678 msec, peer dispersion is 1.234 msec
loopfilter state is 'CTRL' (Normal Controlled Loop), drift is 0.000123456 s/s
system poll interval is 64, last update was 45 sec ago.
確認すべきポイントは以下のとおりです。
| フィールド | 確認内容 |
|---|---|
Clock is synchronized | NTP同期が完了しているか |
stratum 3 | ストラタム番号(数値が小さいほど精度が高い) |
reference is ntp.nict.jp | どのNTPサーバーと同期しているか |
clock offset | 時刻のずれ(msec単位、小さいほど良い) |
Clock is synchronizedと表示されれば、NTP同期が正常に完了しています。
NTPサーバーとの関係を詳しく確認するには:
C9606R-Core01# show ntp associations
出力例:
address ref clock st when poll reach delay offset disp
*~ntp.nict.jp .NICT. 1 45 64 377 12.34 0.123 1.23
+~ntp.jst.mfeed.ad.jp .GPS. 1 52 64 377 15.67 0.456 2.34
~0.jp.pool.ntp.org 133.243.238.163 2 58 64 377 20.12 0.789 3.45
先頭の記号の意味は以下のとおりです。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
* | 現在同期しているサーバー(選択済み) |
+ | 候補サーバー(フォールバック先) |
~ | 設定済みサーバー |
- | 除外されたサーバー |
ステップ5:時刻の確認
NTP同期後、show clockを再度実行して時刻を確認します。
C9606R-Core01# show clock
出力例(NTP同期後):
10:05:30.123 JST Mon Jun 1 2026
先頭の*(アスタリスク)が消えてJSTが表示されていれば、NTPによる時刻同期が正常に動作しています。
ステップ6:設定の保存
C9606R-Core01# write memory
Building configuration...
[OK]
設定コマンドのまとめ
! タイムゾーンの設定(未設定の場合)
clock timezone JST 9
! NTPサーバーの設定
ntp server ntp.nict.jp prefer
ntp server ntp.jst.mfeed.ad.jp
ntp server 0.jp.pool.ntp.org
! NTP送信元インターフェイスの指定(推奨)
ntp source vlan 99
! 設定の保存
end
write memory
よくあるトラブルと対処法
show ntp statusで「Clock is unsynchronized」と表示される
NTPサーバーとの同期がまだ完了していないか、接続できていません。以下を確認してください。
- NTPサーバーへの疎通確認(
ping ntp.nict.jp) - DNSが設定されているか(ホスト名を使用している場合)
- ファイアウォールでUDP 123番ポートがブロックされていないか
同期には数分かかることがあります。設定直後は少し待ってから再確認しましょう。
DNSが設定されていない場合はIPアドレスで指定する
ホスト名でNTPサーバーを指定するには、DNSが設定されている必要があります。DNSが設定されていない環境ではIPアドレスで直接指定します。
! NICTのNTPサーバーのIPアドレスで指定する例
C9606R-Core01(config)# ntp server 133.243.238.163 prefer
C9606R-Core01(config)# ntp server 133.243.238.244
show ntp associationsでoffsetが大きい
時刻のずれ(offset)が大きい場合、ネットワークの遅延が大きいか、NTPサーバー自体の精度が低い可能性があります。より近いNTPサーバー(地理的・ネットワーク的に)を使用することを検討してください。
まとめ
今回のポイントをまとめます。
- NTPはネットワーク機器の時刻を自動同期するプロトコル(UDP 123番)
- 時刻がずれるとログ・証明書・セキュリティ監査に影響するため必須の設定
- CiscoのNTP実装はストラタム1をサポートしない(原子時計等には直接接続不可)
ntp serverコマンドでNTPサーバーを指定する(複数設定が推奨)preferキーワードで優先サーバーを指定するntp sourceで送信元インターフェイスを固定するshow ntp statusで「Clock is synchronized」を確認するshow ntp associationsで各サーバーとの同期状態を詳細確認する
次回はACL(アクセスコントロールリスト)の設定を解説します。どのトラフィックを許可・拒否するかを制御するセキュリティの入門として、実務で最もよく使われる設定のひとつです。



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