ChatGPTをはじめとするAIが急速に普及し、「自分の仕事もそのうちAIに奪われるんじゃないか」と不安を感じている人は多いと思います。とくにインフラやネットワークの仕事は、定型的な作業も多いだけに、「自動化されて要らなくなるのでは」という声をよく聞きます。
私は現役のインフラエンジニアとして、Cisco機器の設計・構築から運用までを実際にやっています。その立場からの結論を先に言うと、インフラ/ネットワークエンジニアは、AI時代でも生き残れます。ただし「今までと同じ働き方のままなら」厳しい、というのが正直なところです。
この記事では、雰囲気や精神論ではなく、公的機関や調査レポートのデータを根拠にしながら、
を整理します!
データで見る:AIは本当に仕事を奪うのか
まず、世の中全体でAIが雇用にどう影響するのかを、信頼できるデータで確認します。
世界経済フォーラム(WEF)の「Future of Jobs Report 2025」によると、2030年までにAIなどの技術によって世界で1億7,000万の新しい仕事が生まれ、9,200万の仕事が失われると予測されています。差し引きでは7,800万の純増です。つまり、AIは仕事を「奪う」と同時に、それ以上に「生み出す」と見られています。
ただし、内訳が重要です。
同レポートでは、消えていくのは事務・データ入力・受付といった定型業務が中心で、逆にテクノロジー・データ・AI分野はもっとも速く成長すると示されています。技術分野の中でも、AI・情報処理技術は新たに約1,100万の仕事を生み、約900万を消失させるとされ、ここでも差し引きはプラスです。
さらに無視できないのが、「2025〜2030年の間に、既存スキルの約39%が時代遅れになる」という指摘です。仕事そのものは増えても、「同じスキルのまま」では通用しなくなる——これがAI時代のリアルです。
インフラ/ネットワークエンジニアの需要は実際どうか
では、私たちの職種に絞るとどうでしょうか。
日本国内については、経済産業省がみずほ情報総研に委託した「IT人材需給に関する調査」が有名です。この調査では、2030年にIT人材が最大で約79万人不足すると試算されています。とくにAI・データ分析・セキュリティといった先端分野で人材が足りないと明確に指摘されています。インフラやネットワークは、まさにこのセキュリティ・クラウドと地続きの領域です。
海外の動向を見ても、ネットワーク/クラウドエンジニア、ネットワークセキュリティエンジニアといった職種は引き続き高い需要と給与水準が報告されています。業界では「AIOps(AIを活用したIT運用)はネットワークエンジニアを置き換えるものではなく、むしろ“優秀なアシスタント”として、エンジニアをより価値の高い仕事に集中させるもの」という見方が主流です。
数字の上でも、人手が足りない側の職種であることははっきりしています。「AIに奪われる」前に、そもそも「人が足りていない」というのが現実です。
AIは何を自動化し、何を奪わないのか
とはいえ、「だから安泰」とは言えません。
AIによって確実に自動化されていく領域もあります。ここを正しく見極めるのが大事です。
自動化が進むのは、たとえば次のような作業です。業界では、2025年時点で新しく追加されるネットワーク自動化機能の多くがAIベースになると言われており、ログ解析、定型的な設定変更、パッチ適用、一次的な障害切り分けといった「ルールが決まっている作業」から置き換わっていきます。これらは、私の現場感覚でも「AIに任せたほうが速いし正確」と感じる部分です。
一方で、AIが簡単には奪えない領域があります。
要件を聞いて全体を設計する仕事。AIは部分最適は得意でも、「この会社の事情を踏まえて、何をどう作るべきか」という意思決定はまだ人間の領域です。次に、前例のない障害への対応。マニュアル化された障害はAIが片づけますが、「なぜか分からないが通信が切れる」といった非定型のトラブルは、経験と勘で当たりをつける人間が強い。
そして、最終的な責任と判断。
ここを機械に丸投げできる会社はありません。
つまり、「言われたことを手順どおりにやる仕事」はAIに移り、「何をすべきか考え、決め、責任を持つ仕事」は人間に残る。この線引きが、生き残れるかどうかの分かれ目です。
生き残るエンジニアと、淘汰されるエンジニアの違い
ここまでのデータと現場感覚を踏まえると、差がつくポイントははっきりしています。
淘汰されやすいのは、定型運用・監視・一次対応だけで止まっている人です。そこはまさにAIが得意な領域で、これから真っ先に効率化されます。手順書どおりの作業しかしてこなかった場合、市場価値は下がっていきます。
逆に生き残るのは、設計・構築・上流に関われる人、クラウドやセキュリティまで守備範囲を広げている人、そしてAIを「使う側」に回れる人です。
AIに仕事を奪われるのではなく、AIを道具として使いこなし、より上流の仕事にシフトできる人が強い。先ほどの「スキルの39%が陳腐化する」というデータは、裏を返せば「学び続ける人にはチャンスが増える」という意味でもあります。
これから身につけるべきスキル
具体的に、AI時代のインフラ/ネットワークエンジニアが強化すべき方向は4つだと考えています。
一つ目はクラウド。オンプレだけでなくAWSなどのクラウドを扱えると、市場価値が一段上がります。経産省の調査でも先端分野の人材不足が指摘されており、ここは需要が確実にあります。
二つ目はセキュリティ。AIで攻撃も高度化する時代、守る側の人材は足りていません。ネットワークの知識にセキュリティを掛け合わせると、代替されにくい存在になります。私自身、CompTIA Security+を取得して、この掛け算の価値を実感しています。
三つ目は自動化・IaC。AnsibleやTerraformのように、インフラをコードで管理する力です。「自動化される側」ではなく「自動化する側」に回るための武器になります。
四つ目はAIツールを使いこなす力。設定の下書き、ログ解析、ドキュメント作成にAIを使えば、生産性が大きく変わります。AIを敵ではなく相棒として使う姿勢が、これからの標準になります。
現役エンジニアとしての本音
正直に言うと、私自身、AIには日常的に助けられています。設定の確認や調べ物、ドキュメント作成では、もうAIなしの効率には戻れません。でも、だからこそ「AIが全部やってくれる」とも思っていません。
実機の前に立って、ケーブルをつなぎ、想定外の挙動に頭を抱え、「なぜだ」と原因を追う——あの泥臭い部分は、まだ当分、人間の仕事です。そして、お客様や社内の事情を汲んで「どう作るのが正解か」を決める判断も、AIには渡せません。私がやっているのは、AIに定型作業を任せて、その分、設計や判断という“人間にしかできない部分”に時間を使う、という働き方です。
奪われるのではなく、使う側に回る。これが、私が出している現実的な答えです。
不安なら、自分の市場価値を確かめておく
とはいえ、「今の会社・今の働き方のままで大丈夫か」という不安は、考えているだけでは消えません。いちばん確実なのは、自分の市場価値を客観的に知っておくことです。
転職する・しないは別にして、エージェントに登録して「自分にどんなオファーが来るか」を見るだけでも、現在地が分かります。AI・クラウド・セキュリティのスキルを持つインフラ人材は、むしろ引く手あまたです。思っていたより高い評価が返ってくることもあれば、「この分野を強化すべきだ」と気づくこともあります。どちらにしても、動いて損はありません。自分の市場価値の確かめ方は、別記事でも触れています。

まとめ
AI時代に、インフラ/ネットワークエンジニアは生き残れるのか。データと現場感覚から出した答えを整理します。
- AIは仕事を奪うと同時に、それ以上に生み出す(WEF:2030年までに差し引き7,800万人の純増予測)
- 日本ではIT人材が2030年に最大約79万人不足。とくにAI・セキュリティ・クラウド分野が枯渇(経産省調査)
- 自動化されるのは「定型運用・一次対応」。設計・判断・非定型対応・責任は人間に残る
- 生き残るのは、上流に関わり、クラウド・セキュリティに広げ、AIを使う側に回れる人
- 既存スキルの約39%は陳腐化する。学び続ける人にこそチャンスがある
結局のところ、「AIに奪われるかどうか」は職種で決まるのではなく、自分がどう動くかで決まります。需要は十分にあります。あとは、その需要に応えられる側に回るだけです。
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